2007年10月~11月
三次元~Triple Dimension~異色短編三部作による路上公演
全47回
―『変幻』に込められた真実―

第5回“真贋”公演【ROMANTIC+GROTESQUE】から約2ヵ月。
早くも、ENGEKI×ENGINE-SAI-が新作公演を行う。
SAIが路上に帰って来る。しかも新作は、オムニバス形式3本仕立てだという。
『三次元~Triple Dimension』とは何か、そしてタイトルに冠された“変幻”の意味とは何か……

【演劇から芸術性を取ったら俗悪な大衆性しか残らないよ】

―お久しぶりです。

倉垣 どうも。元気だった?

―あっ、はい。てかそれは私の台詞じゃないですか(笑)

倉垣 あれそうだっけ?今日は君にインタビューするんだよね、僕が。

―違います!今回は新作公演についていろいろ聞かせていただくんですよ!

倉垣 つまんないなあ………(笑)

―何言ってるんですか!もう!…ええっと、ぶっちゃけ聞きますが、この公演ペースはかなり早いですよね、
ロマグロの時から準備していたんですか?

倉垣 いや、全然。完全に終わってからの話だよ。

―新作3本ですよね?そしてまた路上と。

倉垣 うん。

―かなり創作意欲が高まっているのかな、と思うんですが、どうなんですか?

倉垣 高いよ。というかね、高過ぎるね、今。

―と、言いますと。

倉垣 ロマグロが終わって次のアクションを考える際、全員一致で「また路上」となったのよ。
路上ロングランで得た事を還元したいというかね。ロマグロ自体、最後の方はかなり作品的なクオリティを高めていてね、
それは紆余曲折あったからこそだし『路上演劇』に対して、真剣に向き合った結果としての物だったと思う。
大変だったけれど。

―警察とか。

倉垣 野次とか(笑)
まあしかし一番大きいのは、今、路上新作をやらないと面白い物にはならないって気持ちだね。
来年また、とか言ってると感覚的に鈍ってしまうから、生まれてくる物はどうしても駄作になるし。
本当に、ロマグロの公演初期なんて観れたレベルじゃないからね。

―んー……そうですかね。あの、発展途上な雰囲気やハプニング性の高さ、
アドリブなのか本気なのか分からない危なっかしさ、私は結構好きでしたけれど。

倉垣 ………そう?うーん……こう……送り手としては、やはり後半や追加公演での完成度の高さ
を観て欲しかったからなぁ……。

―DVDでも拝見しましたが、確かに「作品」としては限り無く高まっていました。でも、
こう、観客の視点としてはやはり変化していく過程が面白いわけで。

倉垣 それはあるね。うん。

―実際、たとえば、演劇的評価であったり、知名度であったりと、作品をやり遂げた充実感以外の
結果を得る事はありましたか?

倉垣 ……公演中は、それこそ新聞社とかテレビとか、いろんな人が会いに来てくれたよ。
広がりは持てた、と錯覚してるだけで実際は何も変わらないよ。

―それらは決して記事や番組にはならなかったわけですよね。

倉垣 そうだね。

―不満には思わないんですか?

倉垣 思わないよ。それはきっと、自分たちにそこまでの魅力がなかったんだろうしね。
仕方がない事さ。確かに売れるなら売れた方がいいよ?
でもさあ、そこにアンテナを絞った時点で僕たちは腐って、死ぬよ。

―では今回の公演も、芸術性を重視する、と?

倉垣 そうだね。というか演劇から芸術性を取ったら俗悪な大衆性しか残らないよ。

【偶像崇拝…アイドルを好きになる人間の恐さ】

―今作に関しては聞きたい事が多いんですが、まず、なぜ3本やろうと?

倉垣 ENGEKI×ENGINE-SAI-という集団の特徴を分割して、一色一色、明確にしてみよう、そう思ってね。
どんな部品で構成されてるのかな、と。部品を並べて、確認して、再構築する必要を感じたんだよ。

―その流れから作・演出を「倉垣」さん「本田」さんにしようと?

倉垣 そうだね。

―ヒグチさんはなぜ作・演出なされないんですか?

倉垣 生粋の俳優だからねヒグチは。そういった形での表現手段を好まないんだ。

―なるほど。では順番に聞かせていただきます。なぜ「マッチ売りの少女」を題材になされたんですか?

倉垣 路上のドラマだからさ。そもそもなぜ少女は死ななければならなかったのか。
大晦日の極寒の中売れないマッチを売りに行く…物乞いだよね、マッチ売りという名の。
常識的に考えれば食事もロクにさせてない子供を真冬の街頭に立たせれば死ぬ事はかなりの確率だとわかるわけなんだよ。
作品の時代背景と現代の感覚はズレているんだな。
なので僕は「幻想都市ロンドン」という架空の街を設定して、日本でもなくアンデルセンの生きた時代でもない物にしたんだ。

―贋作の理由ですね。具体的には原作からどう変わっているんですか?

倉垣 少女はマッチ売りの娼婦。父親は常識的な観念や倫理観の欠落した義理の父親。
主人公は青年、街に生きるしがない芸術家で少女の客であり、自称恋人。

―あらすじは…?

倉垣 いいよ。

―ほ、本当ですか!?

倉垣 物語は少女が死んだ後、復讐を誓う青年のモノローグを中心に進んでいく。
なぜ死ななければならなかったのか…その理由は義父にあると青年は考えて、少女の自宅に乗り込んで行くわけさ。

―ありがとうございます。テーマなど、ありますか?

倉垣 偶像崇拝…アイドルを好きになる人間の恐さは、どこか宗教的な盲目さでもあるよね。
何をしでかすかわからないといった……。まあ誰しも陥る可能性があるんだよね、たとえば恋愛。
これも恋人に依存、執着すると宗教化する。
今作は、死んだアイドルと、盲信的なファンと、アイドルのマネージャーの話だと思って観てくれると
テーマに近付きやすくなると思うよ

【エゴ……愛かな】

―続いて本田さんの「憎き肉マン」ですが。

倉垣 はい。

―処女作、しかも作演。…一体どんな内容なんでしょうか?

倉垣 簡単に言ってしまうと、今回の作品で一番アートな作品だね。

―アートですか?

倉垣 俳優の持つ芸術性って、精神性と肉体美だと思う。どちらかだけでは、舞台上での説得力にかけてしまうからね。
唐さんの『特権的肉体論』みたいな…あれに近い物だよね。
本田は肉体表現の優れた俳優だから、その美意識を基準にして創られた、極めて無駄の少ないシンプルな舞台だよ。

―本田さんと言うと、『おもしろ』をやるイメージがあるので、しかもタイトルがタイトルですから、
喜劇等を想像していたんですが…。

倉垣 『おもしろ』の精神はあるよ。でも、喜劇ではない……かな。
ぶっちゃけ現状で7割程しか出来ていなくて(笑)
現時点では『劇』ではない、劇。としか言えないな。

―な、なんだか難しそうですね……。

倉垣 そうだね。多分、『三次元』の中で最もシンプルで最も難しい内容だと思うよ。台詞らしい台詞もほぼないし。

―台詞がない?!

倉垣 台詞がほとんどなくても、観た人に伝わる事ってのは、実は普遍的なテーマだと思う。
人間のエゴ……愛かな、根底のあるのは。ボーイ・ミーツ・ガール的なストーリーにも見えるし。
『三次元』のコンセプトはズバリ“愛”だからね。

―“愛”ですか。

倉垣 うん。あと一本の『阪流☆行進曲』にもそれはある。

―この『阪流☆行進曲』に関してお聞かせ願えますか?

倉垣 いや、ノーコメントだね。

―え??!!

倉垣 これに関しては、一切ノーコメント。
“SAI”を構成する、あるひとつの要素として、とても大事な事をベースにした作品、とだけしか言わない。

―ただでさえ情報の少ないENGEKI×ENGINE-SAI-の作品でノーコメントなんて………何を
考えているんですか?正気の沙汰ではないですよ!

倉垣 確かにね。こういう宣伝のチャンスがあって、宣伝しないのはマイナスだよ。
でも、この作品に関しては、宣伝なくても伝わる自身があるんだ。
逆に言えばこれが面白くならなければ僕らは表現者として失格だよ。
僕らがENGEKI×ENGINE-SAI-であるためのひとつの証明なんだよ、この作品は。
だから観に来た人には、この作品だけでも前情報なしで、色々と感じて欲しいんだ。

―………分かりました。倉垣さんが、どれだけ真剣なのかが、よく分かりました。

倉垣 お前ら本気でそんな事するのかよ!?とか思われても全然かまわないし。等身大の僕らを観て下さい。

―楽しみにしています。

倉垣 楽しませてみせます。


『贋作・マッチ売りの少女』
作・演出:倉垣吉宏  音楽:Cuu-


『憎き肉マン』
作・演出:本田良


『阪流☆行進曲』
作:倉垣吉宏 演出:SAI 音楽:Cuu-