2007年1月27日(土)
PARADE~終焉の詩~
劇作 倉垣吉宏
演出 SAI
音楽 Cuu-

出演
ヒグチ ナオコ
本田 良
倉垣 吉宏

―“SAI”は骨格として在るべき―

1月27日、埼玉蕨市民会館プロデュース・ラ・コンクレレフェスタ参加作品『PARADE~終焉の詩~』
……たった一日だけの公演ながら、とても沢山のオーディエンスに囲まれ無事終了しました。
遅ればせながらご報告申し上げます。

…音響を担当した「ベレッタ44」の田辺辰樹。
今公演のために関西から助っ人に参上し、舞台を美しく彩った「劇団飛行船」のレバニラ☆喰三。
打ち上げ後、二人を送り出し、ヒグチ宅にて録音された俳優三人による対談を掲載させていただきます。
挑戦と実験の向こうに見えたものとは…?

本田: 人選に関しては、今回まったく問題なかったな…。
倉垣: そやな。役者、スタッフともに最高のメンツが揃ったと思う。
本田: レバニラ君なんかこの一日のためだけに来てくれたからなぁ…。
ヒグチ:あの人はほんまに凄かったわ…格好良かった。
倉垣: そやな、いい意味でオチャラけて仕事は真面目にこなす、みたいなな。
あの辺のバランスは見習いたなあ…昔からあんな感じなん?
本田: いや、やっぱ変わってるな。昔はほんまに真面目で誠実な奴やったけど……
あんなユーモア溢れた奴じゃなかったからな。
倉垣: へぇぇ。
本田: せやから一番びっくりしたんは、レバがもう、人として凄いラインに成ってたって事やわな。
仕事は確実にこなす奴やったから、それに加えて、やろ?
倉垣: うんうん…。(と、ここでお茶を飲む音が。ズズズズ…………………。)
田辺君もこの一ヵ月半でめっちゃ成長したな。はじめとか、やっぱ不安やったけどそれを
覆す勢いやったからなあ…。
本田: せやな、田辺君に関しては技術どうこうより意地を感じたな。
ヒグチ:“シャキーン”とか(※1)目茶こだわってたもんな。
倉垣: 負担になるなら“シャキーン”はやんなくていいよ、て言ったけどな(笑)
本田: 「いや、それは駄目ですよ、僕ここ好きなんです!」やったからな(笑)
倉垣: (笑)………まぁアレやな、今回は基礎体温の高いチームやったな。
温度ムラがなかった。
本田: なかった、なかった。でも、スタッフを呼ぶには限界があるよね。
一同: うん…。
本田: 俺の理想としては、音響・照明・舞監(※2)は常駐すべきやな。
そこはもう、科学反応云々てとこじゃないと思う。
倉垣: 今回二人が来てくれた事で見えた事やねんけど、“サイ”は骨格として在るべきやねんな。
興業を打てる母体というか…。人が集まる事による科学反応ってのは、まあ表現者同士での話やからな。
ヒグチ:…まぁでもどっちが先なんやろね…。認知度が低いのに常駐スタッフは難しいしな。
「 自分の明かり、サイさんで作ってみたいんスけど!」みたいな人が、そう居るとは思われへんし。
一同: うん………。
ヒグチ:やからこそ、出会いを大事にするっていうとこやねんけど。

―自己演出が必要やねんな―

倉垣: 毎回思うけれど、自分たちが面白い!と思って作った物は、本当に面白かったのか?
ちゅう不安はなくならへんよね。
本田: おぉ、それはなあ、着いて回るわな!
倉垣: ウケ狙いのない作品やったし、なにより話言葉よりも活字向けの単語や形容詞を多用したから、
音として伝わりにくい、下手したら意味わかんない!とか言われるかなぁと思ったけど、
そうでもなかったみたいで。
「ケロイドより面白かった」とか「話が好みだった」なんて意見が多くて、救われました、正直(笑)
でも、魅せ方としてケロイドと似た部分はあって、それも言われたわな。
本田: はじめに“おどし”があって、笑いがあって、ほんで真面目になる。
倉垣: 短い中で魅せる方法としては、あれが一番いいんよね。“おどし”“笑い”“主題提起”“激突”みたいな。
ヒグチ:でもまあそれが倉垣作品の表現手段のひとつで……
あれやな、これもまた、やり方がひとつじゃないわな、正解がない。
本田: そうやなあ、再演しても問題ないっちゅうか。いつもそうやけど…。
ちょっと話ズレるけど、倉垣芝居に関しては、役作り云々ではなくなってくるわな。
…まぁ、基本的な役作りはあるけど…なんやろな「自己演出」が物凄い必要やねんな。
なんにもない状態、更地の状態やったら何も出来ないし。リアリズム要らないとか怒られるしな(笑)
倉垣: モノによるけど基本的に無駄やからな。日常的な演技をリアルと思うなら、
大阪のおばちゃんを見に行きなさい、て感じやからな。リアリティの意味を履き違えている。
本田: せやからなぁ………「演出:倉垣吉宏」でいいんじゃないんスか?ダメなんスか?
倉垣: …(笑)
僕の中では、役者の中にあるものから演出させてもらってるって意識が強くて。
だからそれは総合演出で“サイ”だと思うし。でもそれは、自分に対する甘えな気もするしな…。
本田: 中盤までは「演出:サイ」でいいと思うねん。でも終盤は違うと思う。
そこはバチッ!と決めてええと思うねんな。「演出:倉垣吉宏」として。
倉垣: そうか……そうやなぁ…て、コレHPに載るならノーとは言われへんやんか(笑)
(一同爆笑)
ヒグチ:いや、それでいいと思うで~。

―暖くなったら、修行に出たいな―

倉垣: しかしあれやな、僕と本ちゃんはケロイドん時より落ちたな。
テンションとか、エネルギーとか、パワーとか。
本田: (録画映像を見て)…芝居自体は上手くなってるんやけどなぁ。
倉垣: (ケロイドは)テクニック的に大変やからな、練習量が要る。試合前のボクサーみたいに。
本田: うん…。悪環境(※3)に打ち勝つパワーはあるねんけどな。
今回は悪条件やったわけやけど。…悪条件ほど恐ろしいもんはないなぁ…。
今回は環境は良かったけど、条件はほんっっっま最悪やったからな…。
ヒグチ:そうやな、あんな大きいとこでな設備もしっかりしてんねんけど…。
あたしは直接的には何もなかったしね。その、交渉とか?全部任せっ放しやったし…。
本田: せやなぁ…じわじわと悪条件に蝕まれてたわ…。
倉垣: ガンみたいなもんよな、悪意がなかったりする分、タチ悪いし…。
本田: おぉ…。それに今回は「やったれー!!なにくそー!!」はなかったなぁ。
湧かんかった…。
倉垣: 直前で芝居のベクトル変えたのも悪かった。僕の判断ミスも大きい。
スタッフワークに大分時間取られたのも…まぁ言い訳がましいけど、あるな。
ヒグチ:………私は、でも、二人のおかげでノンストレスで芝居出来たから、申し訳ないくらいやわ。
本田: いやいやいや!ええねん、だからそれで。今回なにが一番良かったって、アイ(※4)が良かった。
自分が主演じゃなくてもな、作品が良かったて思ってもらえた部分があって。
それっていいなぁ~て思える自分にも気付けたし。
ヒグチ:ほんまに?勉強……ていうと語弊があるけど、今回はすごくいい経験させてもらえたと思ってます。
倉垣: うん、せやな…やっぱ本番があるからこそ成長する。スタジオやレッスンだけで「やったつもり」では
結局そこ止まりやからね。役者は人に観られてなんぼやで。
本田: 暖くなったら、修行に出たいな。一人で路上とかな
倉垣: うん、また路上に出たいね。なんつーか公演とか大それた事じゃなくて、
表現者としてもっと鍛えたい、もっと上手くなりたい、そんな気持ちやな。
ヒグチ:じゃあ次は“修行”公演という事で(笑)
倉垣: ツアーでもしますか(笑)

2007,1,28.AM02:30頃。

※1…本田良演じるスサノオがモノローグで抜刀するのだが、そこのSE。
稽古中、全く合わなかったが本番では奇跡が起きた。

※2…舞台監督の略。仕込み、ゲネリハを含めた小屋入り後の進行兼リーダー。
今回は本田良が務めた。

※3…路上や雨など、イレギュラーな事態を指す。
今回も部分的にあったが、やはり悪意ではないものを責める事は出来ない。

※4…ヒグチナオコ演じる今作の主役。自らの命を削って、人間の歴史を絵に残そうとする、
未来の天皇家の末裔。