ベンチに座る詩人と老婆
撮影:かとうはるひ

SAIの地下劇場で上演された三島由紀夫の近代能楽集「卒塔婆小町」。
国内外で評価の高いこの戯曲。能を原作としているため物語自体に能と同じ構成が用いられている。今回の卒塔婆小町では、演出の八木タケルが「光と影と煙」を駆使した演出を行った。

「大劇場で観ることが出来る卒塔婆小町とは全く違うものを」「ここだから出来るものをやりたい」
結果、前半「公園」では、観客自らが公園に居合わせてしまったような距離感・息遣いを感じる演出になり、聞こえるかどうか人間の可聴域の限界を攻めるようなダイアローグを中心に物語を展開。
変わって後半「鹿鳴館」では、華やかな群舞・開放感のある声・鮮やかな照明を駆使し、前半のモノクロの世界観と大きく違った華やかな演出により印象を変えさせた。

地下劇場の名物ともいえる定刻になっての移動。
今回は突如として鐘が鳴り、般若心経が聞こえる地下空間へと案内される。囲み舞台として空間全体に椅子が並べられており、どこに座ってもいいという事だが、その空間にはすでに先客がいて、人目も憚らず互いの身体をまさぐりあっている。
おそらく、出演者のはず・・・という疑問を抱きながら、次々と観客が入ってくる。
いつはじまるのか、どこまでが芝居の一部か?
観客は読経を聞きながら、物語がはじまるのをじっと待ち続ける。
警備員風の男が巡回に来る。それでもまだはじまらない。
幾度かの鐘が鳴った頃、闇の中から、蠢く存在・・・
老婆が出現し、愛擁する恋人たちの邪魔をする。
街燈の下、ベンチに座り、煙草にを火を灯す。
その姿をじっと見つめて、詩人が訪れ、物語はいよいよはじまるのだった。

アバンギャルドシアターは次回、2019年春頃を予定。
国内外の近代戯曲を題材にして、地下劇場で繰り広げられる新たな世界を、どうぞお楽しみに。